ANT Relay に関して考察

アンテナを共用する一般的なトラシーバーではアンテナ回路を送受に応じて切り替える必要があります。
一般的には一般的なリレーを使っています。 これは最も簡単な選択ですが安直すぎます。昔からそれ相応のリレーがあった筈ですが。
しかし 使い方や動作のタイミングが間違っているとホットスイッチングStart Up Distortion 等の問題があります。
ここでは各種のアンテナ回路の切り替え構造について幾つかの例を示して最適な方法を探します。
リレーを使う方法、半導体を使う方法、切り替えない構造などについて記述します

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1.最も古典的な方法で一般的なリレーを使うやり方
その1
FT-101ZシリーズやFT-901シリーズで使用しているアンテナリレーの切り替え部分の回路図
です。
RL2がそれですが極く一般的なリレーHC2タイプです。
そして駆動は送受転換回路で切り替えられた+12V電源でやっています。
この点が問題です。
先ずリレーが耐電力は十分ですが動作速度が適していません
更に駆動電源が他のリレーで切り替えられた+12Vである事です。

リレーの動作速度はせめて数mSの部品を使うべきでしたし駆動電源はキーイングに応じて一番最初に動作する事が肝心です。

ここらが間違いだったのでしょう。開発当時はSSBが流行り始めて間もない頃でしたからCWに関しては二の次だったのかも知れません。

そこで ブレークイン動作を希望するなら先ずアンテナリレーを適した部品と交換すると同時に駆動するタイミングを変更するべきです。
その2
ANT リレーに普通のリレーを使った他の例
です。
古いQST誌に掲載されていました。
ご覧の様にキーヤー(KEY)を操作すると一番最初にリレーK1が動作し接点が受信から送信機側へ切り替わります。
同時にほんの少し遅れて送信機のキーイング回路にDCが供給されキーイングされて送信信号がアンテナコネクターへ行きます。

この時 使用するリレーに適した部品を選択する事が重要です。

キーの操作が終わると逆の順番で動作。
最初にキーヤー回路が停止して電波が止まり 次にリレーが動作して送信から受信へ切り替わります。
多少の遅延時間を設定出来ます。
駆動電源は極性を変えても回路は同じでダイオードの極性を変えるだけで宜しいと記述してあります。
この方式はリレーを選択する場合 適した動作時間と耐電力に耐える物を探す事が先決でしょう。
3.その他の方法  動作が確実で簡単な構造(但しタイミングを制御するのが面倒かも。それは別の問題ですが)
QST誌1960年1月号に掲載されたW2LYH氏のフルブレークインユニットの製作記事から転載しました。
この方法が最もコストパフォーマンスが高いと思います。

動作は簡単で極めて確実です。
送信機出力は常にアンテナへ接続されており 受信機の入力端子も同時にアンテナに接続されております。

送信時にリレーが一番最初に動作し受信機のトップがアースされ保護します。
その後に送信機から電波が発射されます。
電波が停止すると今の逆に動作して受信状態に戻ります。

使う部品は特殊な物はなく リレーが高速であれば良いだけで普通のリードスイッチ系のものを使います。

送信機系にリレーが入りませんからホットスイッチングは無いです。
アンテナリレーに良い部品が入手出来なくて頭を抱えておられる方は一度は試してみては如何でしょうか。
勿論QRP機器にも応用されるべきでしょう。ダイオード方式より確実です。
但しタイミングを上手く制御する事が大前提ですが。
QST誌の記事はそタイミングユニットの製作記事で素晴らしい内容です)。
2.半導体を使う方式
QST誌に掲載された方式でトリオの820シリーズの機器を使いブレークインを実現したとしています。
ご覧の様にダイオード この場合 1N4000シリーズを使っています。
直列に接続されたD5が重要でここに大電流を流してオンとオフを制御しています。
この大電流を必要とするのが唯一の問題点でしょう。